はじめに –ーー
CentOSはRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードをベースにした派生ディストリビューションでしたが、RHELとは異なる提供方法により、アップデートやパッチ適用のタイミング、コミュニティの貢献度などに違いがあり、そのため、確実性と安定性がRHELに及ばないことがありました。
一方、Red Hatは2019年にCentOS Linuxの代わりにCentOS Streamプロジェクトを提案しました。CentOS StreamはRHELのアップストリーム開発バージョンであり、次期RHELバージョンに新しい機能と技術を事前に統合し、テストする役割を果たします。 そのため、CentOS Streamは本番環境での使用には適していませんでした。
これにより、2024年6月30日に既存のCentOS Linux 7の公式サポートが終了し、CentOSプロジェクトのアップデートとリリースが停止されたため、CentOS Linuxユーザーはパッチが適用されていない脆弱性と潜在的なセキュリティリスクにさらされる状況に直面しました。このような状況の中で、既存のCentOSユーザーは、安定的で継続的なサポートを受けることができる代替ディストリビューションを模索する必要性が浮上しました。
RedHat Enterprise Linux
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は、Red Hatが開発したエンタープライズ級Linuxディストリビューションです。RHELは、25年以上のオープンソース開発モデルの経験に基づいており、Red Hatの統合ポートフォリオとソリューションの中核的な役割を果たします。
RHELの主なメリットは以下の通りです：
- 本番環境に最適化された安定した実績のあるオペレーティングシステム。
- 迅速なパッチと更新を提供するエンタープライズグレードのサポートサービス。
- 広範なパートナーエコシステムとの互換性が証明されています。
- セキュリティ認証とコンプライアンスをサポートし、運用の安定性を確保します。 新しい技術導入と革新のためのオープンソースコミュニティへの貢献 * オープンソースコミュニティへの参加
一方、RHELは有料サブスクリプションモデルを採用しているため、コストが発生するという欠点があります。
過去、CentOSはRHELのソースコードを基盤とした無料配布版であったため、RHELへの移行時、CentOSユーザーが使い慣れた環境で作業できるという利点があります。 また、RHELはCentOSに比べて長期的なサポート期間とセキュリティ、安定性の面で優位性を持っています。 特に、Red HatはCentOS Linuxユーザーのために価格競争力のある移行プログラムを提供しており、CentOSからRHELへの移行を容易にしています。
したがって、CentOSユーザーは安定性と長期サポートを重要視する場合、RHELを代替として考慮してみることができ、特に企業環境でRHELは最も適したCentOSの代替オプションとなるでしょう。
Rocky Linux
Rocky Linuxは、CentOSプロジェクトの終了により、2020年末に発足したオープンソースのエンタープライズLinuxディストリビューションです。Rocky LinuxはRHEL(Red Hat Enterprise Linux)のソースコードを再配布し、以前のCentOSと同様にコミュニティ主導で開発されています。
Rocky Linuxの主なメリットとしては、CentOSと同様のユーザー環境を提供し、既存ユーザーの移行が容易であるという点が挙げられます。 また、完全にオープンソースプロジェクトとして運営されているため、開発過程に誰でも参加することができます。 しかし、コミュニティ主導のため、長期的なサポートと安定性の確保が難しい場合があります。
一方、Rocky LinuxはRed Hatの商用製品であるRHELとは異なり、無料で使用できるという利点があります。しかし、商用サポートが提供されないため、企業環境で使用するには制約がある場合があります。
結論として、Rocky LinuxはCentOSユーザーに慣れ親しんだ環境を提供し、移行が容易であるという点で、CentOSの代替オプションとして考慮してみることができます。 しかし、長期的なサポートと安定性を重要視する企業環境では、Red Hat Enterprise Linuxがより適していると思われます。
AlmaLinux
AlmaLinuxはCentOSプロジェクト終了直後の2020年末に始まったオープンソースのエンタープライズLinuxディストリビューションです。 これはCentOSと同じくRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードを再配布する形で運営されています。
AlmaLinuxの主な利点は、CentOSと非常に似たユーザー環境を提供し、既存のCentOSユーザーの移行が容易であるという点です。 また、無料で使用でき、コミュニティ主導で開発されているため、誰でも参加できるという利点があります。
しかし、コミュニティベースのプロジェクトという点で、長期的なサポートと安定性の確保に困難がある可能性があります。 また、商用サポートが提供されていないため、企業環境での活用には制約がある可能性があります。
結論として、AlmaLinuxはCentOSユーザーに慣れ親しんだ環境を提供し、移行が容易であるという点で、CentOSの代替オプションとして検討することができます。しかし、長期的なサポートと安定性を重要視する企業環境では、Red Hat Enterprise Linuxがより適していると思われます。
その他のオプション
UbuntuとDebianはCentOSの代わりに考慮してみることができる代表的なLinuxディストリビューションです。どちらのディストリビューションも無料のオープンソースプロジェクトとして運営されています。
UbuntuはDebianベースのLinuxディストリビューションで、デスクトップとサーバー環境の両方で広く使われています。ユーザーフレンドリーなインターフェースと簡単なインストールプロセスが長所であり、6ヶ月ごとに新しいバージョンがリリースされ、最新の技術を迅速に適用することができます。ただし、リリースサイクルが短いため、長期的なサポートが難しく、商業的なサポートが不足しているという欠点があります。
DebianはUbuntuのアップストリームソースであり、非常に安定性が高く、セキュリティに優れたディストリビューションです。厳格なパッケージ管理ポリシーのため、最新バージョンのパッケージがない場合がありますが、安定性が重要なサーバー環境で広く使用されています。欠点としては、インストールと設定が難しいこと、デスクトップ環境ではユーザーフレンドリーでないことなどが挙げられます。
したがって、UbuntuとDebianはCentOSとは異なり、Red Hat系列ではないため、移行時にアプリケーションとプロセスの変更が必要な場合があります。 また、企業環境で要求される長期的なサポートと商業的なサポートレベルに欠ける場合があります。 しかし、無料のオープンソース配布版としてコスト削減効果があり、サーバー環境で安定性が必要な場合は、Debianを代替として検討することができます。
結論 – まとめ
CentOSディストリビューションの廃止により、様々な代替オプションが登場しました。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は安定性と長期的なサポートを長所として掲げましたが、有料サブスクリプションモデルのためコスト負担があります。Rocky LinuxとAlmaLinuxは無料で使用でき、CentOSと同様の環境を提供しますが、コミュニティ主導の開発により、長期的なサポートと安定性の確保が難しい場合があります。UbuntuとDebianも無料のオープンソースディストリビューションですが、CentOSとは異なる基盤を持っているため、移行時に多くの変更が発生する可能性があります。
結論として、CentOSの代替オプションとして最も適したディストリビューションは、企業環境によって異なります。 長期的なサポートと安定性が重要であれば、RHELが最も適しているでしょうし、コスト削減が目標であれば、Rocky LinuxやAlmaLinuxを検討することができます。サーバー環境で安定性が必要な場合は、Debianも選択肢になります。今後、Linuxディストリビューションは、クラウドネイティブ技術との統合、コンテナや仮想化のサポート、セキュリティの強化などの方向に発展すると予想されます。ユーザーは自分の要件とビジネス目標に合ったディストリビューションを選択し、長期的なロードマップを考慮して移行計画を立てる必要があります。
